表題番号:2005B-169 日付:2006/02/14
研究課題多様な天然生理活性物質の全合成と新規活性物質の創製
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 竜田 邦明
研究成果概要
 本研究は、まず、有用な天然生理活性物質の全合成を独自の合成法と戦略を展開して完成する。続いて、その手法を効果的に応用することによって種々の構造ユニットを合成し、構造-活性相関研究から活性発現機構を明らかにする。つぎに、特徴ある活性を構造ユニットごとに分離あるいは増強し、副作用の少ない新薬のリード化合物を創製し工業的合成法も開発することを目的とする。この過程において新しい活性の発見と展開も期待できる。
 研究対象物質は、多様な生理活性や絶対構造が未決定のために展開が遅れているが、新規医薬品としての開発が期待されている下記の7種類の天然物である。
 合成研究の結果、それぞれの天然物について今年度の所期の目標を達成した。
1)免疫抑制作用と制がん作用を示すlymphostinの最初の全合成を完成し、さらに構造-活性相関研究の結果、新たに制がん作用を有する構造ユニットを見いだした。2)制がん作用を有するBE-54238Bの最初の全合成を完成し、絶対構造を決定した。また、中間体のnanaomycin類縁体が強い抗真菌作用を示すことを見いだした。3)抗ウイルス作用とTPO受容体アゴニスト活性を示すxanthocillin X dimethyletherの最初の立体選択的全合成を完成し立体配置を確定した。また、構造-活性相関研究の結果、活性発現の最小ユニットを見いだした。4)制がん作用を有するtrichostatin類の最初の全合成を完成すると共にtrichostatin Aの絶対構造も決定した。5)結核菌に強い活性を示すtubelactomicin Aの全合成を完成した。6)養殖魚の病原菌に有効な活性を有するtetrodecamycinの最初の全合成を完成し絶対構造を確定した。7)中枢神経に関与するGABAの拮抗物質であり、抗菌活性を示すxenovuleneの全合成に必要な構造ユニットの合成を行った。