表題番号:2005B-167 日付:2007/05/01
研究課題ナノスケールレベルで形態を制御したアルブミン超薄膜の構築と血小板代替物への応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 武岡 真司
研究成果概要
 リソグラフィー加工によって得られたナノスケールのパターンを利用した多様な形状の高分子ナノシート(ポリスチレンナノシート、アルブミンナノシート、多糖類電解質ナノシート)を大量に構築する技術を確立する。そこに表裏に異なるリガンドやレセプターを担持させ、血流中における形態と血小板代替物としての機能について、既に確立されているin vitro, in vivo評価系と血管損傷モデルを用いて明らかにすることを目的としている。
 平成17年度は、親水部(SiO2)と疎水部(オクタデシルトリメトキシシラン; ODMS)からなる親-疎水マイクロパターン基板(ODMS-SiO2基板)上に、チオール基を複数導入させたrHSA(SH-rHSA)を吸着、架橋により2次元高分子体とし、rHSAナノシートの剥離体を構築した。更に、シートの片面に蛍光標識ラテックスビーズ(LB)を結合させ、ヘテロな表裏を持つナノシートを共焦点顕微鏡にて観察した。ODMS-SiO2基板(10μm x 30μmが7千個)にローダミン標識SH-rHSA(pH 5.0, 1 g/mL)を蜜に吸着させ、未吸着SH-rHSAを除去後、銅(II)イオンを含む酢酸緩衝液中に静置した。界面活性剤(C12E10)処理により剥離させた分散系をフィルターに捕捉し、共焦点顕微鏡にて観察したところ、ほぼパターン通りの形状を維持したシート(膜厚約7nm)が鮮明に3次元観察できた。NBD蛍光標識させたLBにて片面を修飾したrHSAナノシートを543 nmで励起させ、検出波長(>560 nm)として共焦点顕微鏡観察したところ、湾曲したシート全面が赤色に発光した。458 nmで励起させNBDのみの検出波長(505~530 nm)に設定したところ、シート状に黄色発光したが湾曲部が消光(蛍光エネルギー移動)した様子が観察できた。これは、湾曲部の裏面にLBが存在しているためと考えられる。
 以上より、シートの片面のみを修飾できたことを共焦点顕微鏡観察によって初めて証明できた。