表題番号:2005B-162 日付:2008/06/04
研究課題アルコキシ基修飾ナノシートをビルディングブロックとして用いた多孔質材料の合成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 菅原 義之
研究成果概要
 FeOCl型の層状金属オキシクロライドであるTiOClは、チタンイオンに4つの酸化物イオンと2つの塩化物イオンが配位した歪んだ八面体が酸化物イオンを介して稜共有することにより、チタンイオンと酸化物イオンからなる層の表面が塩化物イオンの層により覆われた形のシートを形成し、このシート同士が弱いファンデルワールス力によりc軸方向に積層している。FeOClの層表面修飾については、アンモニアまたはアミンとの反応、中間体を用いたアルコールとの反応、アルカリ金属アルコキシドとの反応の3つが報告されているが、TiOClについてはほとんど報告がない。そこで本研究ではリチウムエトキシド(LiOEt)との反応を試みた。反応はエタノールを溶媒として120℃で密閉容器中で行った(TiOCl : LiOEt = 1 : 1.3)。
 X線解説分析の結果、反応後層間距離がTiOClの値(0.80 nm)から1.19 nmに増加した。チタンイオンと酸化物イオンのネットワーク構造が変化しないことは、両者の電子線回折の結果から明らかとなった。炭素-13固体高分解能NMRスペクトルでは、エチル基に帰属されるシグナルが19 ppmと71 ppmに出現した。特に、アルファ炭素のシグナル位置がリチウムエトキシドの値(58 ppm)から71 ppmに大きくシフトしていたことから、チタンにエトキシ基が結合していることがわかる。層間距離の増加分から考えて、生成物はバイレイヤー構造を持つと推定される。また、生成物の組成分析を行ったところ、塩化物イオンの約半数がエトキシ基と一部水酸基に置換されたことが明らかとなった。これは、隣接する塩化物イオンの位置を2つのエトキシ基で置き換えることが、空間的に不可能であるためと推定される。