表題番号:2005B-161 日付:2008/06/04
研究課題タングステン酸-モリブデン酸系ナノシート:組成・構造の制御と材料への展開
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 菅原 義之
(連携研究者) 理工学術院 客員研究助手 Chen De-Liang
研究成果概要
 三酸化タングステンは、その興味深い電気的・光学的性質や触媒活性から広く注目を集めているが、関連する構造として二次元的な構造を持つ結晶性層状タングステン酸が知られている。これらの構造は三酸化タングステンをスライスし、電荷補償のために層間に水素イオンが導入された構造であり、酸化物ナノシートとみなすことができる。本研究では、2層構造を持つ層状タングステン酸を取り上げ、その層間に有機塩基を取り込むインターカレーション反応について検討を行い、得られる無機層と有機層が交互に積層した構造を解析した。
 2層構造を持つタングステン酸は、対応する2層構造のAurivillius相を6規定の塩酸で処理することにより合成した。これを様々な溶媒を用い、過剰量のn-アルキルアミンと反応させた。溶媒を適切に選択すると、反応初期には酸-塩基反応によるインターカレーション反応が進行し、より大きな層間距離を持つ層間化合物が得られた。走査型電子顕微鏡で生成物を観察すると、ほぼ反応前の粒子の形状を保っていることが明らかとなった。一方、長時間の反応では、ほぼ類似した層間距離を示す生成物が得られたが、走査型電子顕微鏡の観察結果からは形状の大きな変化が認められ、生成物はナノベルトあるいはナノチューブへと変化していた。無機層の構造を解析した結果、2層構造は崩壊し、1層構造となっていることが明らかとなった。従って、反応はインターカレーション反応ではなく、溶解-再析出を経て進行していると考えられる。長時間反応させた生成物を硝酸で処理することにより、有機層を除去して一層構造のタングステン酸を得ることができた。一方、長時間反応させた生成物を熱分解することにより、ハニカム構造を持つ結晶性酸化タングステンが生成した。