表題番号:2005B-156 日付:2007/11/10
研究課題内外環境変化に対するマウス体内時計の適応応答
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 柴田 重信
研究成果概要
不登校や自閉症といった疾病に体内時計異常に基づく睡眠障害が出ることがよく知られている。時計遺伝子ミュータントマウスの母親と子供を用いて、内外環境変動が体内時計のリズム形成にどのように働くかについて調べた。本研究では特にリズムの発達障害に対する内的環境変動として、(1)母親の体内時計異常が子供の体内時計発達にどのような影響を及ぼすか点と、外的環境変動として、(2)子供の飼育環境の光環境を恒常明や恒常暗にすることが子供の体内時計の発達にどのような影響を及ぼすかを調べた。
WildとClockミュータントの母親を用い、仔マウスの入れ替え実験を行い、その後、成長した後これらのマウスの行動リズム障害を調べた。その結果、母親の体内時計に異常があると、母性行動や授乳行動リズムに異常が生じ、その結果、仔マウスの発達やリズム形成に障害が出てくることが明らかとなった。また、母性行動形成にかかわるホルモンとして知られている、プロラクチンの分泌リズムを調べたところ、Clockの母親は分泌量の低下とリズムの平坦化が認められた。このように母親のリズムが不調だと子育てに影響することが明白になった。
つぎに、仔マウスを恒常明や恒常暗で飼育した。その結果、Wildマウスではいずれの飼育条件下でも、行動リズム形成にはなんらの影響も受けなかった、Clockミュータントの仔マウスは、離乳までの時期に恒常明飼育を受けると、行動開始位相に遅れが出ることが判明した。つまり、Clock遺伝子の異常に外的要因として発達期の光環境が影響すると、睡眠相後退症候群(DSPS)のマウスモデルができることがわかった。このようなマウスに臨床的にも使用されているメラトニンを投与するするとDSPS状態が改善された。