表題番号:2005B-155 日付:2007/11/10
研究課題情動制御におけるオレキシン神経の役割解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 柴田 重信
研究成果概要
オレキシン神経は覚醒・睡眠や摂食行動にかかわっていることが広く知られている。先の研究で、オレキシン神経欠損マウスは、給餌制限に伴う予知行動リズム形成が減弱することが報告されている。予知行動リズムは視交差上核を破壊しても影響されないことから、視交差上核の機能を伴わないリズムとして知られている。このようなリズムの他の一つとして、メタンフェタミン(MA)性リズムが知られている。MAを飲水中に添加し与えると、マウスやラットは明暗環境下にもかかわらず、24時間周期より長いリズム示すことが知られている。先に述べたようにオレキシン神経は覚醒に深く関与する分子であるので、MAのリズム形成に影響を及ぼす可能性が考えられる。オレキシン神経欠損マウスにMAを0.005%で飲水投与を行なったところ、対照マウスに比較して、MAリズム形成が顕著に障害された。また、オレキシン欠損マウスは、MAの急性投与による行動量の上昇も低下していた。さらにMAを飲水投与したときの行動量の増大も減弱していた。ところで、オレキシン神経が、DA神経の起始核である中脳被蓋野に促進性に投射していることがわかっているので、オレキシン神経欠損マウスのMAリズム形成障害はDA神経の機能低下に基づく可能性が指摘できる。そこで、中脳被蓋野のDA神経を6-OHDAで破壊し、MAを飲水投与させた。その結果、破壊マウスは、対照群に比較して、リズム形成が非常に悪かった。MAによるリズム形成を確認した後、マウスの線条体や側座核のTH(DA産生の律速酵素)の発現量を免疫組織化学で調べた。6-OHDA破壊マウスの側座核のTHの発現量は著明に低下していた。以上の結果をまとめると、オレキシン神経は中脳被蓋野―側座核のDA神経の活性化を通してMA性リズム形成に関与していることが明らかとなった。