表題番号:2005B-153 日付:2007/11/16
研究課題バイオ発電用生物膜電極を用いた創エネルギー型廃水処理技術の研究開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 榊原 豊
研究成果概要
活性汚泥法は下排水処理の主要プロセスとして広く普及しているが、ばっ気操作や汚泥処理に多大のエネルギーを必要とする。本研究は排水中の有機物が有する潜在エネルギーを電極を介して回収すると共に、排水を嫌気性条件下で酸化処理する新しい水処理法の可能性について検討した。
実験は先ず反応に深く関与すると考えられる鉄還元菌を連続流通下で集積培養し、Fe(Ⅲ)-EDTAを用いて、有機物分解量と鉄還元量の関係について検討した。次に、負極槽に粒状活性炭を充填した実験装置を作製し、活性汚泥および消化汚泥を接種した。続いて、基質となる有機物として酢酸ナトリウム1000 mg/ℓをHRT=1日で連続供給し、全有機炭素(TOC)減少量、電圧、電流等を測定した。
その結果、鉄還元菌は有機物(酢酸)をほぼ式(1)に従って分解することがわかった。第2鉄イオンの還元に関わる電子を式(2)、(3)で回収できれば、バイオ発電によるエネルギー回収と廃水処理を同時に達成できると考えられる。
CH3COOH + 8Fe3+ + 3H2O = 8Fe2+ + H2CO3 + CO2 + 8H+ (1)
負極:CH3COOH + 2H2O = 2CO2 + 8H+ + 8e- (2)
正極:O2 + 4H+ + 4e- = 2H2O (3)
また、連続条件下の電子回収量(電流値)とTOC分解量との関係について検討した結果、処理槽から電圧、電流が発生し、収率は式(2)に対して10%程度であった。一方、発電とは逆に微弱電圧を印加して電流値を上げると、TOC分解量が向上する傾向がみられた。これらの結果から、創エネルギー型廃水処理は可能であるが、今後は処理速度および収率を上げるための装置工学的な検討が必要である。