表題番号:2005B-150 日付:2006/04/06
研究課題強誘電ランダムアクセスメモリー材料での強誘電疲労特性とその分域構造
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小山 泰正
研究成果概要
強誘電体Pb(Zr1-xTix)O3(PZT)やSrBi2Ta2O9(SBT)等を用いた強誘電ランダムアクセスメモリ材料は、次世代を担うメモリ材料として広く注目を集めている。ここでメモリ材料として要求される特性は、電場による分極反転に際して、誘電疲労と生じないということである。実際、パルスレーザー堆積法で作製したBi4-yLayTi3O12(BLT)の薄膜試料は、誘電疲労を示さないことが示されている。そこで本研究では、誘電疲労のない強誘電分域構造の特徴を明らかにするため、代表例であるPZTとBLTについてその結晶学的特徴を透過型電子顕微鏡を用いて調べた。具体的には、動力学的効果によるフリーデル則の破れを利用し、これら酸化物での強誘電分域構造の決定を行った。

[PZTでの強誘電分域構造]
 本研究では、まずPZTにおける強誘電菱面体晶相の室温での分域構造を、x=0.42試料を用いて決定した。その結果、分極ベクトルの方向は<111>方向、分域構造は大きさ100nm程度の109°および180°分域構造から成ることを確認した。そこで、この分域構造の形成過程を調べるため、室温の分域構造を加熱したところ、<001>分極成分領域の大きさの減少に伴い638K付近で10nm程度の斑点状分域へと連続的に変化し、Tc=653Kを越えた700Kにおいて斑点状分域は消失することが明らかとなった。また、この変化は可逆的に生じることも示された。

[BLTでの強誘電分域構造]
 PZTに関する研究に引続き、誘電疲労を生じることのないBLTでの強誘電分域構造の特徴について、La量y=0および0.6を有する試料を用いてその詳細を調べた。ここでは以下に、y=0試料の結果について述べる。まずBLTの強誘電単斜晶相から得られた電子回折図形中には、I4/mmm構造による基本格子反射に加え、q=[1/2 1/2 0]と[1/2 1/2 l]に超格子反射が存在し、その構造中に酸素八面体の回転変位および傾斜変位を含むことが分かった。さらに基本格子反射を用いた暗視野像から、分極ベクトルの方向はI4/mmm構造の[100]方向であること、その分域の形状は<100>方向に伸びたバンド状の形状を有していることが明らかとなった。