表題番号:2005B-146 日付:2006/03/23
研究課題ブロードバンド位相回復による多次元イメージングの高機能化と普遍化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小松 進一
研究成果概要
 回折像の強度分布から光波の波面形状を求める位相回復法に関し,ブロードバンド光源による高機能化と普遍化を達成することが,本研究の最終目標である。物体からの透過光や反射光の波面形状は,物体の形状分布や屈折率分布を反映しており重要である。位相回復イメージングの高機能化により,これらの空間分布をナノメートルあるいはサブナノメートルの精度で計測することを可能にし,ナノテクノロジーの基盤技術として確立することをめざしている。
 本特定課題では,位相変化が小さな弱位相物体に適した非反復型の位相回復アルゴリズムの提案と検証を行った。
 位相回復問題では,フーリエ変換と逆変換を拘束条件の下で繰り返して正しい解に収束させるGerchberg-Saxonアルゴリズムのように,反復型アルゴリズムが一般的である。しかし,反復型アルゴリズムでは,局所解への停滞や,計算時間が長い,などの問題がある。
 弱位相物体では,透過光波あるいは反射光波の複素振幅分布の指数部をテイラー展開した2次以上の項を無視することができ,これによって位相分布を解析的に求めることが可能となる。Gonsalvesは最近,弱位相物体に適用可能な非反復型の位相回復アルゴリズムを提案した.この方法では,異なる物体距離で撮像した2枚の回折パターンを用いるため,機械的な走査機構が必要となる。
 そこで我々は,走査機構が不要な新しい非反復型位相回復アルゴリズムを提案した。本方法では,開口部に弱位相物体を置いたときと置かないときの2枚の回折パターンを利用する。ここでは,弱位相物体のフラウンホーファー回折像を偶関数部分と奇関数部分に分け,偶感数と奇関数のそれぞれの連立方程式を解いて位相分布を求めた.連立方程式を解く過程で,正負の符合の曖昧さが生じるが,フーリエ変換の性質を利用することにより正しく符合を決定できる。
 表面形状が矩形格子状のSiO2基板を弱位相物体のモデルとして用い,He-Neレーザーを光源としてフラウンホーファー回折像をCCDで撮像した。このとき,制限開口として直径200μmのピンホールを位相格子に近接させて用いている。得られた回折像データから提案手法で位相回復を行った結果,表面形状による位相分布(振幅が1/32波長に相当)を回復することができた。