表題番号:2005B-145 日付:2006/03/02
研究課題まちづくりにおける地域口述史記録の活用に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 後藤 春彦
(連携研究者) 理工学術院 助手 田口太郎
(連携研究者) 教育・総合科学学術院 助手 佐久間康富
研究成果概要
 これからのまちづくりにおいては地域住民による独自のまちづくりの展開が想定される。しかし、その際に必要不可欠なことは地域の原風景をふまえた上で、地域住民により将来像が描かれることである。これを通して新たなまちづくりの担い手が誕生し、地域の文脈をふまえた「懐かしい未来」とも表現される将来像が共有され、独自性のあるまちづくりが達成されることが期待される。地域の独自性を形成しているものはまちに暮らす人々の生活の長年にわたる集積である。そこからまちの変遷を読み解き、地域の将来像を描くためには地域に暮らす人々の原風景が刻み込まれた地域口述史記録をまちづくりへと活用することが必要である。
 以上のことをふまえ、本研究では地域口述史記録を活用したまちづくり手法としての「まちづくりオーラル・ヒストリー」の確立を目指し、活用法を開発し、その効果や意義を検証することを目的として、研究を進めた。

1)徳島県由岐町における口述史記録の還元とその評価
 前年度に行った、口述史記録を活用した、総合学習プログラムや地域情報誌について、実際に活動に参加した地域住民や学校教諭にたいしてその有効性の調査を行った。その結果、口述史記録を活用した総合学習プログラム自体については高い評価が得られたが、実際に自分たちで継続していくことについては技術的な課題があることが明らかになった。地域情報誌については、その取材活動や成果については高い評価が得られたが、総合学習プログラムと同様にコンピューターによる編集など、技術的な課題があげられた。この結果、これらの活動の有効性は確認できたものの、住民主体で継続して行っていくには必要な技術水準をさげ、一般の人でも扱いやすいプログラムを開発する必要があることがわかった。

2)小田原市下曽我地域における口述史記録調査および、その活用法の検討
 神奈川県小田原市下曽我地域において、住民28名に対しての口述史記録調査を実施した。この成果を時代を基準に「~開戦」「終戦~高度経済成長」「高度経済成長~現在」、内容を「祭事」「暮らし」「遊び」「農業」に分けてコミュニティ史年表を作成した。また、口述史記録の活用可能性を検討し、地域住民に提示、その評価を得た。その結果、カルタやカレンダーなど、口述史記録のみならず、写真などの視覚的情報とともに提示することが内容を受け入れやすいことがわかった。
 なお、現在研究の成果を対外的に公表すべくとりまとめを行っている。