表題番号:2005B-141 日付:2006/03/24
研究課題固体高分子形燃料電池における電解質膜物性値の評価方法の確立および定量評価の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 勝田 正文
研究成果概要
 PEFCは電解質膜の加湿度合にその性能が大きく左右されるため,セル内の水分管理を適切に行うことは重要である.本研究では,電解質膜の物性値を測定し,それをモデル計算に適用することで現象を把握し,燃料電池の性能向上に寄与することを目的としている.

含水率特性
 電解質膜の含水率は,所定の温度および相対湿度に制御された恒温恒湿槽内に入れて放置し,24時間以上経過後,電解質膜をジップ付袋の中に入れて取り出し,電子天秤を用いて計量する.
 温度70 ℃における含水率特性は,低湿度側では,スルホン酸基へのラングミュア型吸着,高湿度側では,クラスター内への水分子の侵入による溶解型吸着によるものと推察される.

水の拡散係数
 拡散係数は,セル発電時を模擬し,燃料電池評価装置を用い,電解質膜の両側に活量差をつけた加湿ガスを供給し,セルの出入口の水分収支を鏡面冷却式露点計で計測する手法を採用した.拡散係数は,露点温度により算出した極間の水分透過特性と,含水率特性から推定した電解質膜表面の水分濃度を用いて導出した.
 水の拡散係数は,含水率λ=3付近でピークを示すことが確認され,これは,Motupallyらによる報告と同様な傾向を示している.

電気浸透係数
 電気浸透係数の測定は,膜電極接合体の両側に,相対的に湿度が高い窒素ガスと,相対的に湿度が低い水素ガスを流す.このとき,高湿度側から低湿度側へ濃度拡散により水が移動する.さらに,窒素側の電極に正電位を印加して系電流を流すと,濃度拡散と電気浸透の両方の現象が発生する.両極の出口露点がそれぞれ入口露点と一致した状態は,すなわち電気浸透と濃度拡散が釣り合った状態である.このときの濃度拡散水量を前述した水分透過特性の測定値から推定することで電気浸透係数を特定することができる.
 Zawodzinskiらによる濃淡電池を用いた報告と同様に,電気浸透係数は,含水率によらず,0.8―1.2の範囲で測定された.