表題番号:2005B-140 日付:2006/03/24
研究課題東京の都市風によるヒートアイランド緩和効果に関する調査研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 尾島 俊雄
(連携研究者) 理工学術院 客員研究助手 増田幸宏
研究成果概要
近年、東京においてヒートアイランド現象が深刻化しており、現在様々な取り組みが行われているが、都市レベルの対策のひとつとして冷涼な海風を都市に取り込むことが有効であると考えられる。河川は都市内部へと海風を通す機能を持つことが既存研究で報告されているが、東京都心部では河川上の空間に高架道路があることが多く、風の流れに影響を与えていると考えられる。そこで本研究では高架道路がある日本橋川で実測調査を行い風の流れの実態を把握する。日本橋川とほぼ平行に位置する永代通り、また日本橋川上の高架道路下と高架道路から外れた地点でも同様に実測調査を行い、高架道路下の状況と比較することで高架道路による風の流れへの影響を検証した。下記に得られた知見を記す。

1.日本橋川では8月5日、8月6日の2日間を通して河口から約300mまでは出現頻度で9割以上河川に沿った河口側からの風を観測した。
2.河川上で河口から約300mまでは平均風速の減少はほとんどみられなかったが、河口から約700mの高架道路がある観測点で平均風速は約7、8割減少しており、高架道路により風速が弱まり、海風の遡上が抑制されている可能性が考えられる。
3.日本橋川では、上流に進むに従い気温が上昇しており、河口と上流側の高架道路のある観測点で8月5日の終日の平均気温の差は1.0℃、気温差は最大で2.2℃を観測した。
4.高架道路下から外れた観測点に比べ高架道路下の観測点でほぼ終日を通して風速は低くなり、8月5日の終日平均風速比は0.55であった。また、気温も終日を通して高い値で終日の平均気温の差は1.0℃、気温差は最大で1.5℃であった。これは高架道路がある河川上で風が通りぬけにくく、それに伴い気温上昇緩和効果が小さいためだと考えられる。
5.河川と街路で海風の入り口となる河口付近観測点では街路に比べ河川で高い風速となり、終日の平均風速では河川で街路の約2倍の風速を観測した。これより街路に比べ河川に海風が流入しやすいものと考えられる。