表題番号:2005B-137 日付:2006/03/25
研究課題光パケットスイッチング用高速半導体光スイッチングデバイス
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 宇高 勝之
研究成果概要
 インターネットを中心とした通信需要の爆発的な増大により、光ファイバ通信において超高速ネットワーク化が熱望されている。目標とされるシステムは、情報を一定のパケットに分割し、それらを高速にルーティングを行う光パケットスイッチングによる超高速フォトニックネットワークの構築であり、そのキーデバイスとしてナノ秒で動作する高速光スイッチが上げられている。本研究ではその目的にかなうデバイスとして、半導体部分屈折率変調多モード干渉導波路型光スイッチ(MIPS-P)の高性能化、高速動作の実現を目標とした。材料として、キャリアの閉じ込めに優れたInAlGaAs/InAlAsを取り上げ、これを用いたMIPS-Pに対して低クロストーク、偏光無依存のための導波路構造のエッチング深さ条件について解析を行い、0.3um程度のミドルメサとすることが有効であるなどの最適構造を明らかにした。また、ICPエッチングにより注意深く実際に素子を作製し、TEモードにおいて初期状態、変調時ともに-20dB以下の低クロストークと24mAの低電流でのスイッチングなどが実現された。他方、TMモードにおいては初期状態においてクロストークが-15dBと芳しくなかった。その原因として、多モード導波路長が最適値からずれていたと考えられた。動特性として、パルス幅20us、繰り返し周波数10MHz、バイアス0.6Vに1.4Vの振幅の電圧により部分屈折率変調領域を変調し、約4ns以下の応答時間の高速光スイッチングを実現した。その応答波形に若干の遅い応答成分があり、その原因は電流分布の不均一などによるものと推定された。これらの結果により、MIPS-Pの高速光スイッチの有効性を明らかにした。今後偏光無依存化や多モード化、広域波長動作、そしてより高速な応答特性を有する高性能化やこの高速スイッチングを活かしたデバイスへの応用を目指し、光パケットスイッチングの構築に寄与していきたい。