表題番号:2005B-135 日付:2006/02/14
研究課題自然の不均一構造を模倣する薄膜の作成とその物性
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 上江洲 由晃
(連携研究者) 理工学部 助手 福永 守
(連携研究者) 理工学部 助手 浅沼 周太郎
研究成果概要
高温でのSrTiO3の複素誘電率を詳しく測定し、この結果がCaCu4Ti3O12と非常に類似していること、またMaxwell-Wagner型の不均一2相モデルで定量的に説明できることを示した。巨大な誘電率は見かけのもので、厚い相の電気伝導率がアレニウス型の温度依存性をすることによりもたらされる。(JJAP, 44,No.9B,2005).
リラクサーPb(Sc1/2Nb1/2)O3(PSN)薄膜、およびPSNと強誘電体PbTiO3(PT)のモルフォトロピック相境界(MPB)組成薄膜をパルスレーザー成膜(PLD)法で作成し、その構造の評価を行った。その結果、室温ではPSNは擬立方晶、MPB組成をもつPSN/PTは単斜晶であることを明らかにした。これは薄膜についての初めての報告である。(Jpn.J.Appl.Phys.:45, No.1,L42-L45, 2006)
温度に対してフラットで巨大な誘電率をもつが誘電損の大きなCaCu3Ti4O12(CCTO)をCaTiO3で挟んだ薄膜を作成し、誘電損を格段に減少させることに成功した。(2006年度春の物理学会誘電体分科会発表予定)
Liを添加した量子常誘電体KTaO3の構造相転移をSHG顕微鏡、X線回折、中性子散乱、誘電測定を駆使して測定し、電場のもとで著しい経歴依存性を示すこと、低温では秩序変数は非エルゴード的な挙動示すこと、極性ナノ領域の発生に対応する中間相があることを見出した。これらの事実はこの系がリラクサーであることを示している。(Phys.Rev.B72, 144103(2005))