表題番号:2005B-134 日付:2006/03/22
研究課題和周波発生分光法を用いたリン脂質膜と抗菌性ペプチド等の相互作用の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 伊藤 紘一
研究成果概要
和周波発生(SFG)分光法を用いて下記の2項目について研究を進めた.
(1) 和周波発生(SFG)分光法によるpoly(ethylene oxide)(PEO)修飾リン脂質を含む水表面単分子膜の構造解析
poly(ethylene oxide)(PEO)などの水溶性高分子によって修飾されたリン脂質で構成されるリポソームは生体内で高い安定性と生体適合性を示しドラッグデリバリーシステムなどへの応用が注目されている.本研究ではリン脂質膜表面のPEO鎖と膜の安定性との関連を明らかにするために,和周波発生(SFG)分光法を用いて水表面に展開した,PEOで修飾されたdistealoyl phosphatidyl ethnolamine(DSPE-EO45)とDSPEの混合単分子膜(DSPE-EO45のモル分率:1-12 %) について3500-3000cm-1領域(主として結合水のOH伸縮振動バンドが観測される)と3000-2800cm-1領域(主としてDSPEのCH伸縮振動バンドが観測される)のSFGスペクトルの膜圧依存性を解析してDSPE-EO45 のモル分率と膜圧による(i)単分子膜中でのPEO鎖の配向と結合水の構造変化,(ii)DSPEの配向と構造変化を明らかにした.
(2) SFG法を用いたリン脂質/コレステロール水表面単分子膜の構造解析
コレステロール(Chol)が生体膜の構造や安定性を如何に規定するかを明らかにするためにCholとdipalmitoyl phosphatidylcholin(DPPC)との混合単分子膜の表面圧-分子占有面積(π-A)等温線と表面圧によるSFGスペクトル変化を測定解析して以下の知見を得た.(i) DPPCのモル分率(DPPC/DPPC+Chol)0.6で混合単分子膜は最安定構造をとる,(ii) Cholとの相互作用によってDPPCのアルキル鎖はgauche形を含む不規則構造からall-trans形の規則構造に変化する,(iii) DPPCのアルキル鎖の法線からの傾き角はモル分率0.6で最小となる.