表題番号:2005B-124 日付:2006/10/18
研究課題コーポレート・ガバナンスと企業の不法行為
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 専任講師 久保 克行
研究成果概要
この研究では日本におけるコーポレート・ガバナンス企業の行動の関係を分析した。コーポレート・ガバナンスとは、企業の経営者を監視し、インセンティブをコントロールするためのメカニズムである。株主は、経営者が企業価値を最大化するように経営することを望む一方で、経営者は自己の利害を守るように行動する可能性がある。このような経営者の機会主義的な行動をコントロールするためには、何らかのチェック機構が必要である。このようなチェック機構として、経営者のインセンティブおよび監視機構に着目した。
本年度には、上場企業を中心に、さまざまな企業のコーポレート・ガバナンスに関する情報および経営者のインセンティブに関する情報を分析した。ここで使用した経営者のインセンティブに関するデータは、先行研究と比較してももっとも広範かつ詳細なデータである。これらのデータを用いて、経営者に対するインセンティブ・システムが企業に与える影響について分析している。
経営者に対するインセンティブ・システムは経営者に対する直接報酬(役員報酬、役員賞与)、ストック・オプションの付与、株価変動による持株の価値の変動、株価変動による所有ストック・オプションの価値の変動がある。分析の結果、日本の上場企業経営者は株主価値を最大化するような金銭的インセンティブは非常に小さいことが明らかになった。また、経営者のインセンティブ構造の異なる企業でも、企業の業績の差はそれほど大きくはないことも示された。現在、多くの日本企業がストック・オプションの導入などのコーポレート・ガバナンス改革を行っている。本年度の研究の結果は、ストック・オプションの導入は狙い通りの目的を達成しない可能性があることを示していると考えられる。