表題番号:2005B-089 日付:2006/04/19
研究課題記号体験装置としての帝国アウトバーン〈バイオ権力〉と〈速度〉のディスクール分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 原 克
研究成果概要
上記特定課題受給者は、当該年度以下の研究成果を挙げた。1930年代以降中部ヨーロッパにおけるモータリゼーションの加速的進行により、<速度>体験という日常的身振りが文化的係数として、それ以降の市民社会における身体表象・自然表象にいかなる影響を与え、それまで近代的<バイオ権力>という言説の枠組みに絡め取られてきた身体像・自然像とどう関わってゆくかを明らかにすることを目的とした本研究は、特に1930年代以降、速度術の初源的な意味で権力論的な意味を獲得した<速度>が、政治的言説においてだけなく市民社会の日常的身振りを規定していった表象論的経緯を以下のトピックにおいて明らかにした。一つは、ナチスドイツによって建設された<帝国アウトバーン>。もうひとつは、そこに不可欠の構成要素として組み込まれた<自然風景>というエコロジカルなスキームである。
方法論的要諦は、これらをそれぞれ単に歴史的出来事として捉えるのではなく、それらを巡る各種言説をも含んだ表象現象として捉えることであった。具体的には、1930年から1945年までの期間において、それぞれ(a) 数値的、空間的変容、(b) 法的、行政的規制、(c) 文化的慣習、(d) 軍事的・経済的付加価値、(e) メディアによる伝達のされ方、(f)そうした情報が、同時代の世界表象・身体表象をめぐるディスクールへのフィードバックのされ方を体系的に追った。そうすることで数値的な具体的データが、ついには理念的あるいは文化的無意識のレベルに吸引されていくダイナミズムをさり、単に数値データにとどまらず、身体および生命問題をイメージ化し図像化する表象プロセスまで視野にいれたテーマの単著書・論文を発表した。