表題番号:2005B-086 日付:2006/03/23
研究課題メダカを用いたポリコーム遺伝子群の機能解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 東中川 徹
研究成果概要
生物種間の比較による相補的理解を目指して、メダカのポリコーム遺伝子群の研究と併行してマウスポリコームタンパク質M33の研究を進めて来た。本年度は、この研究において進展が見られたのでそれについて報告する。

ポリコームタンパク質は核内に局在しタンパク質複合体を形成して機能するという多くの報告に対して、我々はマウスポリコームタンパク質M33は成体マウス肝臓において核-細胞質間で細胞増殖とリン酸化を伴ったダイナミックシャトリングすることを見出した(Noguchi et al., 2002)。この現象の詳細を明らかにする一環として、M33の核移行シグナル(NLS)の同定を行った。先行的研究における構造的特性の解析からNLS1, NLS2, NLS3の3つが核移行シグナルの候補とされていた。これらを単独に、ペアワイズに、あるいは全部を欠失したクローンを緑色蛍光タンパク質遺伝子につなぎ培養細胞に導入し、緑色蛍光を顕微鏡下で追跡した。その結果、NLS2の欠失が核移行を阻害した。副次的知見として、NLS1はM33タンパク質の核における正常な分布の関与することが示唆された。NLS2を緑色蛍光タンパク質遺伝子につなぐと蛍光は核に局在した。NLS1, NLS3はこの核移行効果を持たなかった。このことから、候補のうちNLS2が機能的核移行シグナルであると結論された。

一方、本研究の進行中に報告された新しい核移行検索ソフトによると、M33にはNLS2と一部オーバーラップする配列(NLS2’)が一個のみ検出された。NLS2’も緑色蛍光タンパク質を核に移行する能力を有することが示された。しかし、NLS2とNLS2’が共有する配列KRPRのみではタンパク質を核に移行する機能は認められず、他のいくつかのアミノ酸の共存が必要であることが明らかとなった。