表題番号:2005B-082 日付:2006/03/24
研究課題遂行機能障害の評価法と治療法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 坂爪 一幸
研究成果概要
 【目的】脳損傷後の高次脳機能障害のなかでも,遂行機能障害は前頭葉損傷と関連の深い最高次の脳機能障害である。小児の遂行機能の発達的変化や障害は不明な点が多い。小児に適した適切な遂行機能の評価課題がないことが原因である。これまでの我々は,小児に負担が少なく馴染みやすい課題であるTinkertoy Testを用いて,小児の遂行機能の発達状態や遂行機能障害の臨床的評価課題としての有用性を検討してきた。有用性検討の一環として,本研究では,遂行機能障害でみられる行動修正の困難さの把握,およびその特徴を明らかにすることを目的にした。
 【対象】健常児74名(平均年齢4.5±1.2歳)と発達障害児41名(平均年齢4.1±1.5歳)を対象にした。
 【方法】遂行機能の評価課題としてTinkertoy Testを施行した。行動修正力を検討するために,Tinkertoy Testの解決過程のエラー分析を行った。エラー分析は,Tinkertoy Testのエラー得点による量的な分析,およびTinkertoyを構成していく過程にみられるエラーを6種類のカテゴリー(積み上げ・並べ上げ・無目的・保続・修正欠如・その他)に分けた質的な分析を実施した。
 【結果】エラー得点については,有意な差がみられた。「エラー減点なし」は,健常児群の方が多く,「エラー減点あり」は発達障害児群の方が多かった。6種類のエラーについて,健常児と発達障害児とで比較を行った結果,健常児群と発達障害児群間で有意な差がみられ,健常児と比較した発達障害児のエラー頻度の高さと多様性が明白になった。特に発達障害児群では約半数が「保続エラー」を示していた。
 【考察と今後の展望】発達障害時では,Tinkertoy Testでエラーが多く,さらに前頭葉機能と関連する「保続エラー」が多く出現しており,遂行機能障害の評価課題として,Tinkertoy Testの有用性には,一定の確認が得られた。今後は,Tinkertoy Testの結果の詳細な分析に加えて,遂行機能障害の改善方法の開発を検討していく予定である。