表題番号:2005B-080 日付:2006/03/22
研究課題米国のアジア系コミュニティにおける「オリエンタル」なるものへの眼差しの研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 小林 富久子
研究成果概要
 本研究の目的は、米国の主流社会において長らく神秘的でエキゾチックといった「オリエンタル」としてのステレオタイプを負わされてきた中国系・日系・韓国系等のアジア系アメリカ人たちが、そうしたイメージに抗すべく、どのような自己表現を近年行いつつあるかを、とりわけアジア系作家自身の文学および映像作品を通して探ろうとするものである。当然、従来のように、主流社会に迎合すべく、白人の抱くイメージ通りに自己演出を行うといった屈辱的アプローチとは無縁の、多元的かつ流動的な存在としてのアジア系表象が現れているのだが、同時に西欧的価値規準に完全に埋没することなく、各々の民族的・文化的遺産をいかに自らの独自性として活かしうるかといった困難な探求にも関わっており、それが具体的に文学・映像作品にどのように反映されているかはきわめて興味深い問題である。必然的に本研究は、アメリカ国内にとどまらず、今日のグローバルな欧米中心的文化において日本・中国・韓国といったアジアの国々およびアジア人たちが以下に表象されているかにも目を向ける必要がある。
 そこで本年に行った具体的研究活動としてはまず、四年毎の世界女性学会議として2005年6月にソウルの梨花女子大学で開かれた"Women's World 2005"会議に参加した。そこにはアジアおよびアメリカからのアジア系アメリカ文学研究者が多数参加しており、多くの貴重な意見並びに情報交換を行った。
 さらに、12月末にはカリフォルニア大学バークレー校を訪問、現在同地でハリウッド映画を含む映像作品内でアジア人並びにアジア系人がいかに表象されているかのドキュメンタリー映画を製作しているエスニック学部教授エレーン・キム氏にインタヴューを行った。次いでワシントンDCに足を延ばし、そこで開催中であったModern Language Association(MLA)の年次大会にも参加、主にアジア系アメリカ文学関連のセッションに出た。特に興味深かったのは、昨今日本でもブームになっている「韓流ドラマ」に関するパネルが開かれていたことである。未だアメリカでは殆ど話題にはなっていないが、日本だけでなくアジア各国に広がっているこの「韓流」ブームが今後アジア人並びにアジア系人のイメージにどのように影響するかは、見守ってゆくべき問題と考えている次第である。