表題番号:2005B-076
日付:2006/04/25
研究課題造血巣の形成と臓器間移動に関する解析
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
---|---|---|---|
(代表者) | 教育・総合科学学術院 | 教授 | 加藤 尚志 |
- 研究成果概要
- 骨髄、脾臓、肝臓、腎臓を造血巣として使い分ける両生類成体(ゼノパス)を実験モデルとして、造血巣の個体内移動における血球系細胞とその環境の質的変化を、造血微小環境を視点の中心として明らかにすることが本研究の目的である。ゼノパスの造血幹細胞のマーカーの同定と分離法、諸造血関連分子の同定などの技術基盤が大幅に進展し、造血巣を構成する分化血球の分布について、1)in situハイブリダーゼーション法による発現遺伝子(mRNA)の細胞組織形態解析を進めた、2)非哺乳類で初めて主要造血因子の遺伝子を分離同定し、それらの構造を明らかにした(データベースへ登録)、3)両生類赤血球前駆細胞のin vitroコロニー細胞培養の最適化に成功し、レトロスペクティブな手法によって、個体内の造血幹細胞の局在や、血球産生の動態を正確にとらえる手法を確立した。また個体内のダイナミックな造血動態を解析するために、全く新たな造血解析モデルを作出した。これらは低温飼育による慢性血球減少症モデルや抗ゼノパス血球モノクローナル抗体投与モデルであるが、これら各モデルの末梢血球変動や、血球系細胞の寿命変動に関して、独自に作成した各種のモノクローナル抗体を適用して、レーザー蛍光細胞分析分離装置によるフローサートメトリーや蛍光免疫細胞染色によって解析した。同時に、ゼノパスの赤血球寿命が100日以上であることや、栓球寿命が1週間以上であるなどの基礎生物学における新たな学術成果も得た。また血球数減少期や回復期にある時、骨髄、脾臓、肝臓、腎臓にある血球細胞の分布(位置と種類)の変動、あるいは各造血巣と周辺組織の細胞相互の位置について、組織連続切片や細胞染色標本を用いた精査に着手することができた。以上の取組みは、現在ヒト造血幹細胞移植療法や再生医療の将来へ向けて課題になっている造血巣の性質に関する基礎的解明と連鎖する成果となり、造血巣に出現する造血幹細胞の由来や、生物種に普遍的な造血能を代償する未知の制御系の発見へ繋がるユニークな取組みとして国内外より注目されつつある。