表題番号:2005B-049 日付:2007/03/24
研究課題記憶・認知実験用線画刺激の標準化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 西本 武彦
研究成果概要
 従来,記憶・認知実験用の視覚刺激として無意味線画(通称,droodle)の標準化を行ってきた.研究過程から,droodleが有するイメージ性の臨床テストへの利用可能性が示唆された. droodleが認知機能アセスメントにどのように利用できるか,本研究において基礎的データを収集した.
 各droodle(271対,542枚)に付与されたラベル(解釈)の多様性を数値に換算した.指標として命名不一致度(H)を用いた.Hは特定droodleに対するラベルの産出度(イメージ喚起性)を表す.次に,絵の複雑性とあらかじめ付されたラベルの適合性がHに与える影響を検討した結果(重回帰分析),Hに対する寄与は適合性要因の方が高いことが示された.
 ラベルの適合性とHから,droodle群を4つに分類した:(a)適合性が高くHが小さい,(b)適合性が低くHが大きい,(c)適合性が高くHが大きい,(d)適合性が低くHが小さい.連想力測定にふさわしいdroodleとして,(a)と(c)に分類されたdroodleを選択した.(a)は平凡反応, (c)は独創的反応を喚起するdroodleである.(a)と(c)領域の中で適合性が7段階評定で平均値プラス1標準偏差以上のもの,およびHが平均より1標準偏差以上離れているdroodleを選択した.さらに絵が単純すぎるもの,および類似ラベルが多いものを削除し,最終的に(a)と(c)に分類されたものから各5枚のdroodleを選定した.これらのdroodleに対して付されるラベルを比較・検討することにより,連想力を測定出来ると仮定した.
 今後は他のアセスメントバッテリーとの基準関連妥当性を分析して,実用化を目指す.この他本研究においては,従来の具象線画の標準化作業を進め,イメージ多様性データを収集した.