表題番号:2005B-048 日付:2006/03/19
研究課題描画の画像解析による計量的心理特徴分析法の開発とそれに基づく実験心理学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 竹村 和久
研究成果概要
  
 臨床心理学や精神医学の領域においては、クライエントに描画をさせ、その描画の特徴から、臨床的な診断を行うということがなされている(岩満他,2004)。さらに、発達心理学の領域においても、児童の発達段階を確認したり、児童の問題行動を理解するために、描画が用いられることが多い(Wallon,et.al.1990)。さらに、タブーが存在したり、社会的望ましさの観点から認知を言語報告しにくいような場合、一般成人を対象にして、描画を用いた調査手法が用いられることがある(竹村他,2003)。本研究では、このような心理描画をいくつかの領域に分割し、その濃淡の濃度ヒストグラムによる頻度分布、空間濃度レベル依存法や濃度レベル差分法による描画の定量的特徴、さらに色の配色に関する定量的分析することを第一の目的とした。また、質問紙調査の結果によって、この特徴次元と評価者の印象用語との関連性構造を多変量解析によって明らかにすることを第二の目的とした。さらに、これらの分析によって得られた基本的特徴の心理的効果を、実験心理学的な手法により明らかにし、描画の心理的解釈の妥当性を明らかにすることを第三の目的とした。
 研究では一般成人を対象者として描画を求める。この方法は、「実のなる木を描いてください」というよなバウムテストや、「日常の生活で危険と思う出来事を絵にしてください」というようなリスクに関する描画などを求めた。
 ここで得られた描画像をスキャナーを用いて計算機の画像に描画を取り込み、画像をいくつかに分割する。バウムテストの場合は、用紙の画像を縦横にそれぞれ2等分し、4つの領域に分けた。分割された画像を画像解析ソフトウェアにより、濃度解析し、濃度ヒストグラムから、平均、分散、歪度、尖度などを求める。さらに、分割された画像に対して、空間濃度レベル依存法によって、エネルギー、エントロピー、相関、局所一様性、慣性などを求めた。また、画像に対して、濃度レベル差分法によって、コントラスト、角度別二次モーメント、エントロピー、平均、逆差分モーメントなどを求めた。また、画像の特異値分析や独立成分分析によって、画像の次元を抽出した。
 分析による描画の定量的特徴から描画の解釈を行い、あわせて臨床的観点、あるいは問題解決的観点からの全体的評価との総合評価を行う。この作業は、臨床心理士や精神医学者などの専門家の判断をもとに行った。これによって得られた評価データと描画の特徴との対応関係構造を多変量解析を用いて検討した。
 これらの研究成果は、国内外の学会や研究集会で公表された。