表題番号:2005B-034 日付:2006/04/03
研究課題統合医療による住民のQOL改善に関する健康心理学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 石井 康智
研究成果概要
 高齢化と生活習慣病の増加は先進国においては世界的規模で進み、日本ではむしろそのスピードは速く、早急に対応・対策が望まれている。中でも寝たきりにならないなどの健康維持・増進に関わる要因は、QOL(Qality of Life 生活の質・主観的健康感)改善に寄与し、医療費の削減にも直結する最重要な要因の一つといえる。課題研究は、行政側のソーシャルサポート面に関わるもので、①病院や保健医療センターなる医療施設や健康相談業務の利用環境の拡大充実に対する住民の期待と実現化の側面、及び②健康維持・増進に直結する行政サービス(健康関連施設やそのソフト、委託事業を含む)のソフト面での内容充実というサービスの側面、という二点を小さな事例から予備的に検討を行った。
(1)長野県長谷村は西洋医学と東洋医学を考慮した統合医療的観点から医療システムを構築している。理学療法士の下で村民のボランティア補助活動を通した退院後通所リハビリテーション事業(村の健康増進センターで医師監督下で行うパワーリハビリテーション)を行っている。診療所に隣接する健康増進センターにて2004年5月にスタートし、リハビリ効果は年度後半から見られ始めたが、ボランティア補助が不十分であった。今回の研究対象になった2005年度は、ボランティアの補助教育と補助経験が生かされ、パワーリハビリテーションの効果は大きく現れ、通所者の日常動作が大きく改善され、表情の輝きが戻り始め、患者側のQOL改善がもたらされ、ボランティア側にも関わる喜びと張りをもたらされた(QOLの改善)。通所利用施設のハード面とソフト面の適切で有効な活用がボランティア補助活動によってなされた点が、両者のQOL改善に直結しているといえる(通所記録、行動観察、利用時の会話他)。関わる人のQOL改善と医療費削減という行政側の問題を解決する取り組み方のモデルケースになりうると考えられる。小規模な事例であるが大きな問題提起になっているといえる。
(2)東京都S区健康生きがい課と連携し、2004年4月から区民に対する「元気館健康生き生き講座」を実施している。従来S区が主催した健康関連講座は定員を満たすことが無かったが、この講座は30名の定員に対し倍以上の応募で関心の高さが分かった。この年度は連続8回構成の講座で、それぞれ4月、10月、2005年1月から別途3回行われた。2005年度特定課題研究は、2004年度と同様に連続8回構成の講座を3回実施し、講座への受講状況(講座参加リピート率他)や講座内容に対する意見から、今回の健康意識に関わるQOLへの寄与条件を推定し、今後の研究の基礎資料とした。3回実施した講座内容は、第一回目は操体法、気功、ぷらぷら運動、二回目・三回目は操体法、気功、太極拳を織り交ぜた内容で構成された。参加者の年齢は60-70歳代が主で、40歳代はまれ、80歳代は非常に少なく、50歳は少なかった。年齢的に膝が痛い、腰痛持ち、持病を抱えている、血糖値や血圧が高い、高齢になってから健康維持により多く注意を向け始めているなど、健康状態維持には強い思いが認められた。講座内容は難しくなく、自分でできるように実習し、身体の調子が短期間に良くなるように工夫し、飽きない内容に組み立てた。各回38名前後の枠にし、3回の講座参加者数は延べで65名、1回のみ参加した者40名、2回参加者20名、3回参加者15名であった。2-3回参加者は、各回の約半数を占め、アンケート(20名分)からは、講座に通うことによって仲間ができて張りが出た、体調が良くなった、顔色が良くなったり声に張りが出たと言われる、背筋が伸びた、膝通が無くなった、痛みが出てきても対処できるようになった、自分の体を客観的に見られるようになったなど、QOLに寄与していることが分かった。仲間ができる、話ができる、体調が良くなるといった要因が大きく作用していることが分かった。