表題番号:2005B-031 日付:2006/04/12
研究課題米国少年司法における「ステイタス・オフェンダー」規定の歴史的変遷とわが国への影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 助手 小西 暁和
研究成果概要
2005年度特定課題研究助成費を利用し、アメリカ合衆国で「ステイタス・オフェンダー」(Status Offender)を取り巻く現況に関する資料収集・実態調査を実施した。とりわけ、ニューヨーク市で現在、実施されている「ステイタス・オフェンダー」に対するFamily Assessment Programを開発したヴェラ司法研究所(Vera Institute of Justice)のClaire Shubik研究員からプログラム実施後の効果について詳細な説明を受けることができた。また、「ステイタス・オフェンダー」に対する法制度に関する研究を行っているカリフォルニア大学アーバイン校のCheryl L. Maxson教授と意見交換を行うこともできた。
以上の資料収集・実態調査の結果として、アメリカ合衆国内の「ステイタス・オフェンダー」に対する法制度の近年の動向と、その問題点を十分に把握することができた。1970年代・80年代に高まりを見せた「ステイタス・オフェンダー」に対する「脱施設収容化」(Deinstitutionalization)の波は一段落着いたが、現在一般化しているプロベーションによる処分に関しても新たな動きが出てきている。特にニューヨーク市では、ソーシャルワーカーによる家庭の支援という児童福祉の視点から「ステイタス・オフェンダー」に対する法制度を構成し直している。こうした試みは、家庭内で問題を抱えている場合が多い非行少年に対して初期段階で適切な介入を行う方法を今後わが国で再検討する上でも十分参考になるであろう。ただ、わが国の近年での児童虐待ケースの急増という課題を考慮しながら、児童福祉の領域における人的・物的資源の限界を明確に踏まえることが必要である。
これらの知見から得られた研究成果を、平成18年度中に『比較法学』(早稲田大学比較法研究所発行)もしくは『中央研究所紀要』(財団法人矯正協会附属中央研究所発行)に掲載する予定である。