表題番号:2005A-942 日付:2006/03/08
研究課題巨大惑星形成過程における原始惑星円盤の役割
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際教養学術院 助手 稲葉 知士
研究成果概要
研究計画にあるように、巨大惑星形成過程における原始惑星円盤の役割について調べた。原始惑星円盤外部では、宇宙線でイオン化されたガスは磁場とカップルして磁気流体不安定を起こし、原始惑星円盤内部への流れを生じる。一方、ガス密度の大きい原始惑星円盤内部では、宇宙線によるイオン化は磁気流体不安定を起こすには不十分でガスの流れは生じない。その結果、原始惑星円盤の外部と内部の境界付近にガスが溜まることが予想される。
我々は、この原始惑星円盤の外部と内部の境界付近に形成されるガス溜まりの安定性について最初調べた。ガス溜まりの幅が円盤の高さに比べて狭く、密度が周囲のガスに比べて30%ほど大きいならば、溜まったガスはロスビー不安定を生じ円盤内部においてもガスの流れを生じる。また、ロスビー不安定で形成された高気圧の渦は中心星周りを100周する間、安定であることも明らかにした。
更に、高気圧の渦中にどの程度のダスト集中が見られるか調べるために、ガスとダストからなる2成分流体計算を行った。高気圧のガス中では、ダストはガス抵抗とコリオリ力を受けて渦中心に集中しダスト密度を上昇させる。例えば、センチメートルサイズのダストでは、中心星周りを100周する間にダスト密度を20倍も上昇させる。強いガス抵抗を受ける大きなダストはより短時間で渦中心に集中する一方、ほとんどガスとカップルしている小さなダストはなかなか渦中心に集まらない。また、ダストの受けるガス抵抗の反作用のため、主にガスからなる高気圧の渦は回転力を失い、センチメートルサイズのダストを含む渦は100ケプラーで渦としての形態を保てなくなることも明らかにした。
これらの研究結果は、原始惑星円盤の内部と外部の境界付近においてロスビー不安定で形成された高気圧の渦は、微惑星や巨大惑星コアの形成場所として十分な条件を備えていることを示している。