表題番号:2005A-920 日付:2006/02/20
研究課題景観論の環境社会学的分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 鳥越 皓之
研究成果概要
本研究は、2004年の156回国会で「景観法」が成立したことをうけて、問題点を提示し、景観法の内容に対して、修正案を提示しつつ有効な政策を模索することを目的とした研究であった。具体的な課題は、各地域の個別性をふまえたいわば「生活の歴史」を内包した景観論を提示することにあった。このような課題をふまえて単年度の限られた予算での研究であるから、いままでの私自身の研究の蓄積の延長上に、この課題の不足分の短期間の現地調査と、印刷された資料の収集に研究の焦点をあてた。
 その結果として、具体的には共著論文として比較的大部な本を出版する目途がつき、出版社(農文協)も出版を決定した。私はその本のおよそ3分の1の頁数を執筆する。その内容は、第1に、現場からみた景観法の限界と、それにもとづき、新しく政策的に展開できる可能性について討議をした。国立市の国立商店街の景観保護運動、潮来市や丸亀市など地方都市の地方自治体による景観保護の動向、国土交通省の景観についての考え方の変化、地元住民がどのような形で景観の保護に関われるのか、というような点について具体的な検討を加えた。基本的には、先に述べた「生活の歴史」の蓄積としての、景観をもっとも大切なものとみなすという政策を支持する考え方となっている。したがって、いわゆる人間の手の入らない〝純粋の自然〟の景観をもっとも望ましいという考え方、他方、都市では見苦しい看板だけはのぞこうとか、住宅地に高層マンションは望ましくないという消極的な景観保護論の両者に対して批判的な立場でまとめた。