表題番号:2005A-908 日付:2006/09/04
研究課題多アノード光電子増倍管を用いたシンチレーション光計測システムの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 鳥居 祥二
研究成果概要
 本研究においては、64アノードの光電子増倍管からのシグナルを高速かつ低消費電力で処理するためのフロントエンド回路の改良を実施して、加速器実験や宇宙実験に利用が可能なデータ取得システムの開発を行った。主な改良項目としては、Field Programmable Gate Array(FPGA)の利用によるトリガー信号処理、データ通信プロトコルの改良によるシステム全体の高速化である。
 この改良によって、従来は数Hzのレートに限定されていた、気球搭載型の宇宙電子線、ガンマ線の観測装置の高速化が可能となり、100Hz程度のデータ取得性能が実現されている。このような高頻度トリガーによる観測によって従来は困難であった10GeV以下のエネルギー領域での、宇宙線フラックスの太陽変調による影響や、大気ニュートリノ振動を調べるための相互作用モデルの研究が可能となる。加速器実験の分野では、欧州共同原子核研究所(CERN)の世界最大の衝突型加速器(LHC)による、超高エネルギー核相互作用の研究に必要なイメージングカロリメータの開発、製作をこのシステムを用いて実施している。この装置の性能確認のためのビームテストが2006年8月に予定されており、このテストにおいて本システムの性能を明らかにする予定である。
 この開発において得られた成果は、医療分野などにおける光計測技術としても利用が可能であり、今後は産業利用についての検討を行い、より広範囲な利用のための開発を実施する予定である。