表題番号:2005A-895 日付:2006/03/02
研究課題ニトロキシドラジカルポリマーの合成と有機ラジカル電池への展開
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助手 須賀 健雄
研究成果概要
1. n型ラジカルポリマーの合成と酸化還元挙動
 ニトロキシドのo-位に電子吸引基としてトリフルオロメチル基を置換したスチレン誘導体を合成し、ラジカル重合、脱保護・化学酸化を経てラジカルポリマーへ誘導した。CVよりカソード側-0.76 Vにn型の酸化還元波が現れ、繰り返し掃引しても安定であった。無置換誘導体ではp型レドックスを示すことより、置換基の電子効果によりレドックス対の選択が可能であることを実証した。n型高分子で作製した炭素複合電極は、溶液と異なり不可逆な酸化還元挙動を示した。定電位電解、電解ESR、電解UV測定より安定性を検証中である。
2. ラジカル高分子層における電子・物質(対イオン)移動過程の解析 
 TEMPO置換ポリメタクリレートから成る高分子被覆電極(膜厚2x10-6m)のCVは、ピーク電位幅狭く、電気化学パルス法から高分子膜中における電荷の見かけの拡散係数Dappは10-8 (cm2/s)桁と見積もられ、高分子膜内においても速い電子移動を明らかにした。複合電極の走査電顕像より炭素繊維の周り約100 nm厚みで高分子が覆う形態が観察され、高分子層内をホッピングして電子伝達されていることが示唆された。
3. TEMPO置換ポリグリシジルエーテルの合成と電気化学特性
 高容量かつ電解質との相容性が期待できるポリエーテルを主鎖に選択、TEMPOを側鎖に置換したラジカルポリマーを分子設計、アニオン開環重合により分子量約3万の高分子量体を得た。ラジカルポリマー/炭素複合電極を正極、リチウム負極とした試作セルは、3.7 Vにプラトー電位、100サイクル後も安定した充放電挙動を示し、電極活物質としてきわめて安定であることを明らかにした。
 今後は、選ばれたラジカルポリマーの電極・セル評価を進めるとともに、n型レドックス能を有するラジカルポリマーを分子設計・精密合成し、全有機から成る薄型フレキシブルな電池実現を目指し展開予定である。