表題番号:2005A-872 日付:2006/03/07
研究課題通信処理向け適応型プロセッサ設計に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教授 戸川 望
研究成果概要
 通信処理プロセッサ/ネットワークプロセッサは,比較的新しいタイプのプロセッサで,主にパケットのスイッチングに代表される通信処理に特化した専用プロセッサである.これまで基幹ネットワークの通信処理など高速な通信パケットのスイッチングが主眼となる箇所に使用されてきた.しかしながら,情報家電を筆頭とするエンドユーザ機器では,通信処理プロセッサに対し,これまでの (1)単純なスイッチング処理,に加え,(2)マルチメディア情報の符号化/復号化,(3)個人コンテンツ情報の暗号化/復号化,(4)ファイアウォール機能,(5)QoS(Quality ofService)の制御,を適応的に実現することが不可欠と考える.
 以上の背景のもと,本研究では通信処理向けにアプリケーション処理を適応的に変化させることを可能とした専用プロセッサの設計に取り組んだ.提案する通信処理プロセッサは,複数個の「不均一」な構造を持つプロセッサコアの集合体として,通信パケット処理の負荷に応じて,「適応的に」内蔵プログラムを変化させ,処理の均衡化を図るしくみを持つものを考える.また通信パケットの遅延制御を確保するため,パケット優先順位に基づくバス調停機構(QoS調停機構)を設け,しかも各プロセッサコアは,QoS調停機構付き共通バスに接続されるアーキテクチャを持つ.この結果,上記(1)~(5)の処理を実現しかつ確実なパケット遅延制御を実現することが期待できる.
 (1) 通信処理向け適応型プロセッサの基本アーキテクチャの構築,ならびに,(2) 通信処理向け適応型プロセッサの自動設計環境フレームワークの構築,を通じて,提案する通信処理向けにアプリケーション処理を適応的に変化させた専用プロセッサは,既存のネットワークプロセッサに比較して,そのスケーラビリティを大幅に向上させることで,10%~20%程度の性能向上を実現し,3Gbpsに近いスイッチング処理や,250Mbpsを越える暗号化通信処理を実現することが確認できた.