表題番号:2005A-870 日付:2008/05/21
研究課題シアノバクテリアを用いた細胞分化の構成的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教授 岩崎 秀雄
研究成果概要
多細胞性シアノバクテリアのモデル種としてAnabaena PCC 7120の細胞分化の中枢遺伝子の一つhetR,patSは,それぞれ転写因子およびその転写調節因子をコードしている。HetRは自身の転写の促進因子であり,patSの転写も促進する。いっぽう,PatSは拡散性のオリゴペプチドで,HetRの働きを抑制し,ネガティブフィードバックを生み出す。したがって,自己活性化ループと自己抑制ループのカップリングしたネットワークを含む,さらに抑制因子が拡散性であるようなネットワークであり,そのままTuring patternによる固定波形成ネットワーク・モデルに妥当している。当初は,この遺伝子ネットワークを異種生物である大腸菌に組み込み,大腸菌をテストチューブとして遺伝子機能やそのダイナミクスを解析することを目標とした。
そこで,まず大腸菌にhetRオペロンとpatSを遺伝子導入し,転写レベルの発現活性化・抑制を再現出来るかをチェックした。この際,レポーターとしてバクテリアルシフェラーゼを用い,遺伝子発現の経時変化のリアルタイムモニターを行ったが,発光を確認できず,hetRオペレーターは大腸菌では働かないことが明らかになった。
そこで,現実のシアノバクテリアにおけるhetRの遺伝子発現のリアルタイムモニタリング系の構築のほうが重要であると判断し,蛍光顕微鏡観察条件下で連続的にバクテリアを長期培養・遺伝子発現モニタリングできる系の開発に成功した。これにより,バクテリアの発生に関する細胞系譜を初めて取得することに成功した。
 これらの成果は,バクテリアを用いた形態形成の研究を飛躍的に向上させるものとして,国際的にも大きなインパクトを与えつつある。