表題番号:2005A-862 日付:2007/04/03
研究課題経営企画部における数量的マネジメント・ツール適用の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 小林 啓孝
研究成果概要
 現代の企業は資金供給者に対する説明責任を果たし,納得性の高い合理的な経営を行っていくためにリスクを考慮に入れた数量的アプローチをとることが望まれる。私は,そのようなアプローチについて研究を進めてきたが,本研究もその一環である。本研究では,日本の先進的企業の実務家との情報交換を核とした研究を進めた。
 従来管理会計の分野では,学問的にも実務的にも投資に対するリターンに関心があり,リターンと関係があるはずのリスクに対しては明示的に考慮に入れてこなかった。リターンとともにリスクを考慮に入れたマネジメント・コントロール・システムを構想していくべきであるというのが,本研究の問題意識である。
 実務家との交流を通じて,総合商社ではリスクを考慮入れた業績尺度として金融機関で考案され,使用されているRAPM(risk-adjusted performance measurement)に独自の工夫を加えて適用し,リストラクチャリングを始め,業績改善に役立てていることを知った。そこで,本研究では,RAMPの基本的考え方,枠組みについて研究を進めるとともに,総合商社以外の事業会社にRAMPの枠組みが適用可能かを検討した。
 RAPMはリスクとリターンの両方を明示的に考慮に入れた経営指標であり,その意味で従来の伝統的な管理会計の手法を超えたものとして評価できる。しかしながら,研究を通じて,一般の事業会社が置かれている状況はRAPMが基本的に想定している状況とは異なること,また,一口にリスクと言っても,実はリスクは多様であり,リスクの質とでもいうべきものを考えていく必要性があること,リスクにどう対処するかといった行動主体側の態度も問題にしていく必要があることを確認した。リスクとリターンの両面を考慮に入れたマネジメント・コントロール・システムとしては,一般の事業会社に対しては別の枠組みが必要だと考えられる。これを明らかにしていくのは,これからの研究課題である。