表題番号:2005A-861 日付:2006/03/06
研究課題日本の企業金融の特徴としての子会社政策
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 米澤 康博
研究成果概要
 わが国企業において上場子会社を持っている親企業の特性を横浜国大大学院生の山本健氏と共同で実証的に分析した。その目的は①親会社にとって上場子会社を保有することの意義を明らかにする、②子会社上場の親会社株価に与える効果の実証分析(conditional event study)を行う際の準備(第一段階の推計)、の二点にある。上場会社のうち子会社、関係会社は616社あり、これから公企業等に保有されている例外を除く547社が最終的なサンプルとなる。
①上場子会社を保有している親会社の特徴としては、「規模が大きく、一人当たり賃金、レバレッジ、役員持ち株比率が高く、逆に労働装備率、トービンのQ、ROAは低くい」である。典型的な日本的な企業である。
②この情報をもとにHeckmanによるsample selection biasを除いた手法を用いてconditional event studyを行うと、子会社上場は親会社の株価に対してプラスの効果を持っていることが確かめられ、その効果は親会社の株価が低い場合の方がより強く検出される。このことはバブル崩壊後、debt overhungに陥った日本的な企業がその負債返済資金調達手段として子会社上場を果たしていることが推測される。
 今後は、これら諸結果を参考に企業の境界についての理論的な分析を行う予定である。