表題番号:2005A-850 日付:2006/04/02
研究課題環境予算の意義とその編成方法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 伊藤 嘉博
研究成果概要
 予算は、企業の経常的な運営において必要不可欠な制度であるとともに、予算が策定され執行されてはじめて、実際の経営活動が遂行されるのである。企業の環境保全活動には、多くの経済的資源が投入されることになるため、当該活動の実行にあたっては、その活動に関する予算が設定されている必要がある。実際、わが国の企業において環境保全活動に関する予算を策定しているところは、すでに多数に上っている。また、一部の先進企業では、環境マネジメントシステムの目的と目標を自社の中期計画と施策の管理に活用し、その実行のための予算を編成しているところも見受けられる。本研究では、これらの先進企業の環境予算の編成とその後の統制活動の実態を明らかにすべく、継続的にインタビュー調査を行った。他方で、環境予算のロジカルな編成を支援するツールである環境予算マトリックスの導入研究(アクションリサーチ)を日本企業3社の協力を得て実施した。その結果、企業の環境保全活動の管理において予算が有益な役割を果たすことが明らかとなった。とりわけ、目標の達成度合いの検証、予実管理に基づくフィードバックによる改善および管理者や従業員の動機づけという点において、環境マネジメントへの予算の活用の有用性が示唆された。
 ともあれ、アカデミックなフィールドにおいては、環境予算に関する研究はこれまで、Burritt & Schaltegger(2002)の研究を除けば皆無に近い状況にあった。それだけに、環境コストと環境負荷の削減の効率的な目標管理を目指す環境予算の重要性とその具体的な展開方法について、一定の方向性を示せる研究成果を得たことの意義は大きいと考えている。なお、環境予算マトリックスの導入研究については今後も継続していく予定である。