表題番号:2005A-832 日付:2007/04/02
研究課題インカ遺跡の比較研究―遺跡データベース作成から―
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 助手 森下 壽典
研究成果概要
 インカ遺跡に関する調査成果は、マイナーな雑誌で概報が公表されるのみであったり、論文中に成果について触れられているだけであったりと、遺跡ごとに報告書としてまとめて刊行されることが必ずしも多くない。
 本研究の目的は、インカ遺跡に関するこうした多様な資料を集成し、一定の基準のもとにデータベースを構築することで、今後の比較研究のための基盤を構築することにあった。
 このため、日常的な報告書・図録などの収集に加え、夏季には、南米エクアドル共和国におけるインカ遺跡の発掘調査に参加するとともに、あわせて同国で文献収集などを行った。また冬季には、岡山BIZEN中南米美術館など、日本においてインカ遺跡に関する資料を収蔵する美術館・博物館を訪れ、ここでも資料収集に努めた。
 このような活動によって得られたインカ遺跡に関する資料から、遺跡平面図、出土遺物、関連文献などを抽出し、FileMaker社のデータベースソフトFileMaker Pro 7を用いてデータベース化を試みた。調査・研究が新たに行われ、その成果が次々と刊行されていく以上、この作業に終着点はなく、今後も継続的にデータベース更新を行ってゆく予定である。
 しかし、これまでの作業によって、とくにインカ遺跡より出土した土器については、たとえばウルクスユ多彩色土器と呼ばれる一群がティティカカ湖周辺だけでなく広範な分布域をもつこと、インカ土器の起源としてはこれまで最重要視されてきたキユケ土器に加えルクレ土器の影響も考慮すべきことなど、いくつかの重要な知見を確認することができた。
 なお、その成果は下記の通り学会発表で発表し、および翌年度には学術論文の形で公表した。