表題番号:2005A-504 日付:2007/03/13
研究課題嫌気性アンモニア酸化細菌を活用した低コスト・省スペース型排水処理プロセスの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教授 常田 聡
研究成果概要
 近年発見された嫌気性アンモニア酸化反応を排水処理技術に応用することができれば,単一の反応槽で窒素除去を行うことができ,従来の硝化・脱窒法に比べ,酸素供給量,水素供与体の補填量の削減,余剰汚泥の発生量の抑制が可能となることから,大幅なコスト削減が実現できる。本研究では,分子生物学的手法を活用し,嫌気性アンモニア酸化細菌の生態学を明らかにするとともに,嫌気性アンモニア酸化細菌の大量培養技術の開発,固定化技術の開発,さらにこの菌体を用いた新規排水処理技術の確立を行うことを目的とした。
 まず,これまで培ってきた硝化細菌や脱窒細菌の培養技術を応用し,嫌気性アンモニア酸化細菌の集積技術および連続培養技術に取り組んだ。上向流型リアクターにポリエステル繊維不織布を充填し,アンモニアと亜硝酸をそれぞれ35mg/L含む培養液を供給した結果,120日程度でアンモニアと亜硝酸が同時に減少する嫌気性アンモニア酸化反応が確認された。実験では3種類の種汚泥(下水処理施設から採取した余剰汚泥および消化汚泥,養豚廃水処理施設から採取した硝化汚泥)を用いたが,いずれの場合もほぼ同様の結果を得ることができた。つぎに,滞留時間を徐々に減少させることで嫌気性アンモニア酸化細菌の増殖速度を高め,最終的に脱窒速度9.8kg-N/m3/dを得た。この実験の際に得られた脱窒速度の上昇カーブから,嫌気性アンモニア酸化細菌の増殖速度が,既報告値より格段に速いことが示唆された。そこで,嫌気性アンモニア酸化細菌の菌数変化をFISH法により定量的に評価した結果,倍加時間が1.8日であり,従来報告されている倍加時間11日に比べて増殖速度が5倍以上であることを明らかにした。つぎに,上記の方法で集積培養した嫌気性アンモニア酸化細菌群をポリエチレングリコール(PEG)ゲルに包括固定化することに成功し,活性の低下がほとんどないことを確認した。最後に,このゲルをリアクター内に投入し,模擬排水の処理試験を行った結果,低水温下や有機物共存下においても長期にわたり安定した窒素除去特性を得られることを確認し,本技術の実用性の高さを証明した。