表題番号:2005A-503 日付:2007/02/27
研究課題メタラサイクルを活性中間体とする多官能性環状化合物の触媒的合成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 柴田 高範
研究成果概要
 報告者は既に、キラルイリジウム触媒を用いる対称ジインと対称モノアルキンとのエナンチオ選択的分子間[2+2+2]付加環化反応を報告した。本反応は、軸不斉をもつC2対称キラルテルアリール化合物を高収率かつ極めて高い不斉収率で与える。これまでに報告したジインのカップリングパートナーは、両プロパルギル位に酸素官能基を有するアルキンのみであった。そこで本研究で一つあるいは二つの官能基をもつ種々のモノアルキンの検討、さらには炭素-炭素多重結合に替え、炭素-ヘテロ元素多重結合をもつ化合物を検討した。
 まずプロパルギル位に、一つの水酸基、アミノ基、ホスフィニル基を有するアルキンとジインとの反応を行った結果、いずれの場合も環化生成物であるテルアリール化合物が、単一ジアステレオマー、かつほぼ一方の鏡像異性体のみで得られた。さらに、アミノ基と水酸基をともに有するアルキンでも反応が進行し、ほぼ光学的純粋なアミノアルコールが得られた。これらの結果は、エナンチオ選択的[2+2+2]付加環化反応により種々の官能性基を有する軸不斉化合物が得られるたこと意味する。
 次に、ジカルボニル化合物とジインの反応を検討した結果、ロジウム錯体を用いることにより、ヘテロ[2+2+2]付加環化反応が進行することを見いだした。1,6-ジインとピルビン酸エステルの反応では、環化体として二環性2H-ピラン化合物の生成を確認できたが、単離精製する過程で不安定な2H-ピラン環が開環し、ジエノン体として得られた。不斉反応へ展開するため1,7-ジインを用いたところ、二環性2H-ピラン化合物を単離同定することができた。現在のところ中程度(50% ee)の不斉収率を達成できたが、今後エナンチオ選択性を向上させ、不斉ヘテロ[2+2+2]付加環化反応による不斉炭素を有する複素環化合物の合成を目指す。