表題番号:2005A-502 日付:2008/02/28
研究課題マルチフェロイクの物理とその応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教授 勝藤 拓郎
研究成果概要
(1) 強誘電体-強磁性体ナノコンポジット薄膜の作製と物性
強誘電体と強磁性体からなるナノコンポジット薄膜を作製し、その物性を調べた。BaTiO3 65%とCoFe2O4 35%からなるコンポジット薄膜をレーザーアブレーションで作製した結果、CoFe2O4が直径数nmの柱として、ほぼ三角格子状にBaTiO3の中に整列することが明らかになった。また、強誘電転移と自発磁化も観測され、強誘電体、強磁性体としての性質を兼ね備えることもわかった。さらに低温で0.6%程度の負のmagnetocapacitance(誘電率の磁場依存性)も観測された。以上の実験より、マルチフェロイクとしてナノコンポジットを作製することの有効性が確認された。

(2) 誘電率がスイッチングを起こすスピネル型鉄バナジウム酸化物の発見
スピネル型FeV2O4は150K以下で逐次構造相転移をおこし、105Kにフェリ磁性転移温度を持つ物質である。この物質の多結晶試料の誘電率を磁場下で測定し、磁場に対して複雑はヒステリシスを持つこと、ゼロ磁場の値が直前にかけた磁場方向に応じて2値をとること、すなわち磁場によって誘電率の値がスイッチングを起こすことを見出した。磁化の磁場依存性の測定結果から、磁化曲線が二重ヒステリシスループを描くことがわかり、このことがゼロ磁場における誘電率のスイッチングにつながっていることを見出した。これらの結果は新しいタイプのマルチフェロイクであり、今後も集中的に研究していきたいと考える。

(3) 絶対光学反射率の空間分布を測定する装置の開発
薄膜等の光学反射率の絶対値を、400nmから900nmまでの任意の波長で、1$mu;mの空間分解能でイメージングできる装置を開発した。これによって、電子構造の空間依存性が精密に議論できるようになった。これまでに、電場誘起で電気抵抗が変化する物質の測定を行い、電気抵抗変化と同期する光学反射率の変化の空間イメージングの測定に成功している。今後は偏光依存性測定も含めて、マルチフェロイクにこの測定手法を応用していく。