表題番号:2005A-080 日付:2007/11/16
研究課題脊椎動物における体節パターン形成の数理モデル構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教授 高松 敦子
研究成果概要
マウス、ニワトリ、ゼブラフィッシュなどの脊椎動物の発生過程における体節形成には、胚の前後軸に沿って配列した未分節中胚葉(Presomitic mesodoerm; PMS)と呼ばれる細胞群で30~90分周期で発現する時計遺伝子群が大きく係わっていることが近年明らかにされてきた。これら細胞群の尾部側では全体が同期した周期的振動が見られるが、頭部に向かってこの振動の波が伝搬していく領域があり、やがでこの波は先端で静止し定在波となり、その部分で分節がおこり体節が順次形成されていく。
 この特定課題では、尾部で発生した時計遺伝子群の時間的振動がどのようにして体節という空間周期構造を形成するのかについて数理的考察を行うことが研究目的であった。
 反応拡散モデルという系では、パラメータに依存して、振動場、伝搬場、定在波場が形成されることが知られている。一方、ゼブラフィッシュでは尾部から頭部に向かってFGF(繊維芽細胞成長因子)活性が勾配を形成していることが知られているので、この事実に基づき反応拡散モデルにおいてパラメータの空間的勾配を設定した。その結果、ゼブラフィッシュやニワトリ胚に見られるような時計遺伝子群発現の時空間パターンを再現することに成功した。
 次の段階として、時計遺伝子の周期的発現について構築された分子反応に基づいたモデルにNotch-Deltaによる細胞間相互作用を導入することで、結合振動子系としてのモデルを構築し解析を行っている。