表題番号:2005A-078 日付:2006/03/25
研究課題携帯情報機器を対象とした楕円曲線暗号LSIの試作と自動合成システムに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 柳澤 政生
研究成果概要
本研究では、携帯情報機器に搭載することを前提として、楕円曲線暗号に特化したアーキテクチャを考案し、回路試作することを主たる目的として研究を行った。主な研究成果を以下に示す。
1.暗号技術による安全性に着目した上で、ワードベースモンゴメリ乗算器を設計し、それを搭載した楕円曲線暗号LSIアーキテクチャを提案した。ワードベースモンゴメリ乗算器のワード幅、個数の構成を変更可能な160ビット楕円曲線暗号LSIアーキテクチャを提案し、計算機上に実装することで評価した。この乗算器が20個の構成で回路面積は126Kゲートであり、174MHz で動作させた場合、160ビットの暗号化を3.6msで実行可能である。既存研究との比較では、同程度の回路面積の楕円曲線暗号LSIと比較して、処理時間を16%削減できることを示した。
2.メディア処理LSIの高性能化に着目した上で、スレッド分割アルゴリズムとスレッドに対するGated Clockを用いた低消費電力化手法を提案した。スレッド分割を適用する前の回路と比較して、スレッド分割を適用した回路の平均待機状態を増やすことで、待機状態にあるサブスレッドに対しGated Clockを適用し、効果的な消費電力削減を実現している。提案手法を評価するため、画像処理アプリケーションとしてJPEGエンコーダを実装し、提案アルゴリズムを適用した場合としない場合とで、各モジュールとJPEGエンコーダの消費電力と消費エネルギを比較した。提案手法では、スレッドに対するGated Clockを適用しているため、Gated Clock制御回路の面積オーバーヘッドは小さく、増加を3%までに抑えている。消費電力の大きなレジスタファイルをスレッド内に生成するスレッド分割アルゴリズムを適用することで、消費電力を最大で48%削減し、JPEGエンコーダの消費エネルギを33%削減できることを示した。