表題番号:2005A-074 日付:2008/11/17
研究課題顕微ラマン分光法による有機超薄膜の構造解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 古川 行夫
(連携研究者) 理工学術院 客員研究助手 細井 宜伸
研究成果概要
有機発光ダイオードの典型的な構造(ITO/CuPc/NPD/Alq3/LiF-Al)をもつデバイスに関して,光学定数を用いて各層における電場すなわち光の強度を計算し,ラマンスペクトル測定における励起光強度について明らかにした.励起光の入射角と電場の関係を導いた.有機多層膜構造のラマンスペクトルは,各有機層の厚さ,光強度,散乱断面積(共鳴効果)の三つの要素で決まる.上のデバイスでは,633 nm光励起の場合には,主にCuPcが観測され,532 nm光励起の場合には,CuPcとNPDが観測された.これらの結果では,散乱断面積の影響が大きい.トップ電極として金薄膜を用いて,Au/Alq3/SiO2/n-Si構造の金属・絶縁体・半導体デバイスに関して,電界効果によるキャリア注入がAlq3に及ぼす化学変化をラマン分光により研究した.静電容量・バイアス電圧の関係を測定し,負バイアス電圧領域において正キャリアが注入されることがわかった.また,金薄膜から励起光を入射して顕微ラマンスペクトルを測定したところ,表面増強ラマン効果によるラマン散乱強度の著しい増大が観測され,金電極表面におけるAlq3のラマンスペクトルを測定することができた.さらに,バイアス電圧を変化させてホール注入・放出を繰り返すと,Alq3は化学変化をすることを見出した.この方法は,電極である金属表面における有機半導体の劣化を研究する標準的な方法となり得ることがわかった.金の代わりに,銀を用いると,蒸着しただけでAlq3に化学的な変化が起こった.また,アルミニウムでは表面増強効果が小さく,Alq3のバンドを観測することができなかった.