表題番号:2005A-069 日付:2007/11/10
研究課題時刻認知の学習・記憶形成における時計遺伝子の働き解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 柴田 重信
研究成果概要
本研究では時遺伝子が予知行動形成にどのようにかかわるかを明らかにすることを研究の第一目標に掲げた。 Cry1/Cry2(無周期)、mPer2(短周期)、Clock(長周期)の時計遺伝子ミュータントマウスが、それぞれ、給餌サイクルの周期(22-28時間)を変えた刺激に反応して予知行動を形成するか否か調べこととした。面白いことに、それぞれのミュータントのフリーラン周期に応じて、mPer2ミュータントでは短周期の給餌リズムに同調し、Clockミュータントでは長周期に同調する傾向が見られた。そこで、Clockミュータントで26時間周期に対して予知行動形成が完成した動物を用いて、この動物の脳を6時間間隔で摘出し、mPer2やClock以外のBmal1, mPer1,などの遺伝子発現変動リズムを調べた。さらに、体内時計の下流遺伝子である、Dbp ,E4bp4などの遺伝子発現についても調べた。その結果、Clockミュータントで予知行動に同調したマウスでは、肝臓や、大脳皮質の時計遺伝子の位相が、26時間周期に合っていた。一方、Wildマウスでは24時間周期の給餌提示に合いやすく、その結果、肝臓や大脳皮質の時計遺伝子発現リズムも24時間周期を示した。一方、Cry1/Cry2のミュータントマウスでも、予知行動が出現するようであれば、予知行動リズム形成にかかわる時計遺伝子は先に述べた従来の時計遺伝子とは異なった遺伝子発現を伴う可能性がある。実験結果では、Cry1/Cry2のミュータントマウスでは予知行動が減弱され、また不安定になる傾向にあったが、阻害されなかった。以上の結果、従来の時計遺伝子も予知行動リズム形成にかかわっていることが明らかになったが、その関与は弱いものと思われる。なぜなら、ほとんど無周期を示すCry1/Cry2のミュータントマウスでもリズム形成は可能であったからである。