表題番号:2005A-062 日付:2006/03/22
研究課題走査トンネル顕微鏡による単一分子レベルでのスペクトル測定と反応制御に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 伊藤 紘一
研究成果概要
上記課題について下記の実験を行った.
(1) 超高真空走査トンネル顕微鏡(STM)装置の整備と性能検査
 2005年度末に導入された極低温走査型トンネル顕微鏡(ユニソク,USM-1200S2E3)について除振装置の整備,外部電源の安定化などに
ついて検討するとともに,Si(111)7´7再構成表面を作成して極めて良好な原子像を観測して装置が所期の性能を発揮することを確認
した.さらに,有機分子のSTM像の観測とSTM-IETSスペクトル測定のため、試料の精製や観測室への導入を行う特別なポートの製作し
た.
(2) 測定用タングステン(W)針の作成のための電界研磨条件の最適化
 測定用探針として市販のPt-Ir針と自作のW針の性能チェックを行い研究の目的に後者が適していることを確かめ,その電解研磨条件を変化させて,KOH溶液の濃度,印加電流と電圧,電解時間などの最適化を行った.
(3) Si(100)2´1再構成表面作成条件の最適化
 Si(100)2´1再構成表面における有機分子との環状付加反応機構に関する研究の準備として,欠陥の少ない再構成表面の作成条件と探索実験を行った.その結果,prebake温度として600℃(加熱時間:6時間程度),flash温度として1200℃(加熱時間:数分)で所期の表面を調製可能であるが,Si基板を設置する前にホルダー部分のprebakeを十分に実施することが清浄な2´1再構成表面に不可欠であることを見出した.
(4) Ag(110)原子状酸素再構成表面作成の最適化
 一連のAg(110)原子状酸素再構成(n´1)(n = 2 – 6)再構成表面におけるアニリンやピリジンなどとの反応機構を赤外反射スペクトルとSTMを併用して研究するための準備として,超高真空試料処理チャンバーにおけるAg(110)表面への酸素ガス暴露量と再構成表面の生成状況を低速電子線回折(LEED)で観測しつつ再構成表面の調製条件を決定した.また,一部の再構成表面についてSTM像の観測に成功した.