表題番号:2005A-031 日付:2006/03/23
研究課題イモリ雌由来のフェロモンの単離・同定・局在・遺伝子クローニング
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 菊山 榮
研究成果概要
イモリ雄は求愛行動の開始に先立って雌の総排泄口に鼻先を近づける行動をみせる。これは雌が生殖可能かどうかを判定するためであると推測されている。我々は雌が放出している化学物質によって判定していると想定して、その物質の単離同定を目指した。繁殖期の雌の卵管の抽出物を含むスポンジブロックは雌を有意にひきつける。この抽出物をタンパク分解酵素で処理すると活性を失う。抽出物を分子ふるいにかけると分子量5000以下の画分に活性がみとめられた。したがって活性物質はペプチドであると考えられ、種々のカラムクロマトグラフィーにより活性物質の単離を試み、現在までにアミノ酸3残基よりなる活性ペプチドを得た。このペプチドの抗体を作製し、免疫組織学的に同物質の局在をしらべたところ、総排泄口に近い卵管壁が免疫陽性であることがわかった。同物質をコードするcDNAのクローニングを試みたが、アミノ酸3残基より得られる塩基配列情報では不十分であることがわかった。一方、雄イモリの放出ソデフリン前駆体のcDNAクローンの解析の結果、ソデフリンをコードするmRNAはすべての地方のすべての個体の肛門部腹腺で発現しているが、奈良地方のイモリに特異的にソデフリンとアミノ酸1残基異なるフェロモン様物質を発現していることを発見した。この物質を単離するとともに、同物質を合成し、活性をしらべたところ、奈良産の雌にのみ強い誘引活性を示し、新潟や千葉産イモリの雌には活性を示さないことがわかった。このソデフリンバリアントをアオニリンと名づけた。