表題番号:2005A-023 日付:2006/04/14
研究課題俵屋宗達の絵画様式-古典摂取と創意性
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 村重 寧
研究成果概要
 俵屋宗達の絵画についてはこれまで多くの研究がなされてきたが、その伝記や作品の整理などに意が注がれ、彼の絵画の本質、特性などに関しては、踏み込んだ研究が十分に果たされてきたとはいいがたい。とくに平安時代以来の古典―大和絵からの画風の摂取の状況、また独創性豊かな新しい装飾様式がいかに形成され、のちの後継者、尾形光琳らに継承され、展開されていったか、といった点についてはさらなる考察が必要である。
 こうした問題を具体的に追究していくのが、申請者のかねてからの課題であった。今回、本研究費助成をうけて、国内外の作品調査、およびスライド等の資料収集につとめ、検討を重ねて、認識を新たにすると同時に、今後の研究遂行に確かな足がかりを得ることができた。
 作品調査では、東京、京都を中心とした博物館、美術館、社寺における古代、中世の絵巻や屏風、襖絵をかなり実見、資料収集した。また宗達や光琳の作品が多く流出している米国の各美術館を訪れ、現地調査の機会を得た。中でもフリア美術館(ワシントン)では、俵屋宗達の傑作の一つ「雲龍図屏風」に再見し、宗達が創始した「たらし込み」をはじめ「双筆」「吹き墨」などの技法とその効果の実態を詳細に確認できた。またメトロポリタン美術館(ニューヨーク)では、光琳の代表作の一つ「八つ橋図屏風」を間近に観察し、宗達様式がこの派の画家たちにどのように継承され、新展開されていったかを分析、理解することができた。
 今回のこうした調査、研究の成果は、本来の研究目標に十分つなげることができ、ぜひともこの成果を生かすべく、さらに努力を続けていく所存である。