表題番号:2005A-019 日付:2006/03/18
研究課題横光利一とマスメディアの相互関連性の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 十重田 裕一
研究成果概要
横光利一とマスメディアとの相関性を総合的に解明しようとする本研究では、今年度、主に以下の二点のテーマに取り組んだ。一点目は、マスメディアが拡大、多様化する大正後期から昭和初期に、横光利一をはじめとする新感覚派がどのように展開したか、ということ。もう一点目は、第二次世界大戦後のアメリカのGHQ/SCAP(General Headquarters/Supreme Commander for the Allied Powers)による検閲と横光の「旅愁」との関係について検討することである。前者については、「富ノ澤麟太郎――光と影の散歩者」(『日本のアヴァンギャルド』2005・5 世界思想社 214-227P)、「新感覚派文学の中国における受容の一側面――『色情文化』を中心に――」(「曙光」第3号 翰林書房 2005・12 55-62P)、「広告から見た大正期「文藝春秋」の展開」(「国文学研究」第148号 早稲田大学国文学会 2006・3 98-109P)として、後者については「さまよえる本文――第二次世界大戦後版「旅愁」の成立」(『横光利一の世界』 翰林書房 2006・3 予定)として、それぞれ論文に著した。
なお、研究ノートの「文学者の神話形成をめぐるノート――横光利一と「文学の神様」について――」(「昭和文学研究」第51集 2005・9 昭和文学会 75-79P)では、「文学の神様」という神話作用の再考を行った。ここでは、これまで「小説の神様」=志賀直哉、「文学の神様」=横光利一とされてきた定説に再検討を加え、「文学の神様」=横光利一がマスメディアと文壇状況によっていかにつくりだされ、変容したかを明らかにし、あわせて、そのプロセスを検討することにより、この作家の神話作用を批評的に考察した。
他に、本研究に関連する研究成果として、日本比較文学会第67回全国大会シンポジウムでの発表「新感覚派の文学と映画が出会うとき」(2005年6月18日)、フランス国立東洋言語文化学院(INALCO)での講演「引き裂かれたメディア――占領期日本文学検閲の一側面」(2006年3月6日)がある。