表題番号:2005A-009 日付:2006/02/20
研究課題1681年フランス海事勅令の研究-海商法の実質的意義の解明に向けて-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 箱井 崇史
研究成果概要
 2005年度単年度の研究ではあるが、まだわが国で十分な研究がなされておらず、全文の邦訳もない1681年フランス海事王令の研究を行ってきた。本王令は、海事に関する公法・私法を含むものであり、およそ六法のすべてと国際法領域にまたがるため、研究開始当初から関連文献の収集に努力した。これは、アンシャン・レジーム期の司法制度・行政制度の理解、そして当時の航海の理解が研究の前提となるためである。その結果、すでに入手済みの注釈書2冊に加えて、フランスの学位論文を含む数多くの和文・仏文資料を入手することができた。
 そこで、まずは王令の各条文の理解のために、王令の章立てに沿って研究を進め、①「アミロテ(海事裁判所)」を中心とした当時の司法制度、行政制度、②船舶および船員の航海組織、③領事制度、④船舶の競売などについて、一通りの研究を終了した。その結果、王令第1編および第2編の計266箇条の翻訳を終了することができた。その後、海事契約に関する第3編の研究を継続した結果、現在までにあわせて509箇条分の範囲について、新たな知見を得るとともに、その邦訳が完了している。
 今後は、第4編および第5編につき研究を継続し、全702箇条の全文訳を完成させるとともに、個別テーマの研究に着手して研究成果を公表していきたいと考えている。とくに、上記①、②および④については、本研究で明らかとなった当時の制度等については、わが国では先行研究がほとんど存在していないので、早期に成果をとりまとめていきたいと考えている。
 もとより、このテーマでの単年度の研究には限界があるが、本研究は、同王令と1807年のフランス商法典(ナポレオン商法典)との関連を解明することにより、海法の実質的意義を明らかにしようという最終目標に向けた出発点でもあり、その意味でも有意義な研究を行うことができたと考えている。先行して公表する王令条文訳も、わが国では初めてのものであり、海法はもとより、法律学の各分野の基礎研究として重要な意義があろう。
 当面予定している研究は以上に示したが、さしあたり入稿済み・入稿予定の成果としては次の項目に掲げるものがある。