表題番号:2005A-006 日付:2006/03/27
研究課題二・二六事件の歴史的意味について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 堀 真清
研究成果概要
 日本政治史研究を指導された故林茂教授は、私に二・二六事件研究はライフワークになる仕事だといっておられたが、いまや先生の言葉が現実になりつつある。そうではあるが、1500頁ほど事件について論文を発表してきたうえで一応こういうことではないかと思っている。
(1)二・二六事件の理解は、事件の起源をなす西田税の存在の解明にあること。西田は二・二六事件の思想的背景とみなされた北一輝の忠実な弟子とも、北を利用した革命ブローカーともいわれ、また、事件鎮圧者からは軍部撹乱者と攻撃され、決起者からは先輩として信奉されていた。このように毀誉褒貶の激しい人物がどのように事件にいたるまでの一連の出来事に関与し、あるいは出来事を造形してきたかの解明が事件論の鍵であること。
(2)事件は尾崎・ゾルゲ事件の尾崎やゾルゲが観察していたように、あるいは経済学者の森嶋通夫氏が示唆したように、国内の経済改革(特に土地改革)を第一義としたものであること。
(3)北一輝の思想については、『日本改造法案大綱』に盛られた私有財産制限、とくに私有地制限が二・二六事件と関係しているが、北の主要な3つの著作(他は『国体論及び純正社会主義』『支名革命外史』)を通じて一貫して現れる北独特の正義論を追及することが肝要ではないかということ。
 このような展望を持つにいたったので、この研究成果を整理して世に問いたいと思う。