表題番号:2004B-966 日付:2005/03/24
研究課題戦国大名領国における山野の生業と商品流通に関する復元的研究-越前朝倉氏領国を例として-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 松澤 徹
研究成果概要
本研究は、日本中世・近世の移行期にあたる戦国時代の商品流通経済のあり方について、山林資源の用益と流通を生業としていた人々に焦点をあてて考察することを目的とした。研究対象としては、越前朝倉氏領国をあつかうこととし、とくに中世の越前国において山岳信仰の霊場として栄えた越知山の別当寺、大谷寺の寺領とその周辺地域を素材として研究をおこなった。
大谷寺は、戦国~江戸時代を中心にして越知神社文書という内容の豊富な文書群を残している。その中の「越知山大谷寺神領坊領目録」などの詳細な帳簿史料によって、膝下に広がる寺領の所在を地図上に落とし、また「山方分年貢公事注文」などの史料によって、戦国時代の寺領および周辺の山間の村々の生業(山野の用益・商品流通)の実態について考察した。2004年8月3日(火)・4日(水)の福井県立文書館(福井市)における史料・資料調査では、この越知神社文書のみならず、周辺地域にのこる文書のうち、刊本では全体像を確認することができない17世紀ごろまでの近世史料にとくに注意して、山野の生業に関連する史料を収集した。また同時に、先行研究についても、とくに現地発行の地方史研究雑誌を検索して、郷土史の研究成果を研究に組み入れるべく、福井県立図書館(福井市)にて収集した。
また、復元的な方法による本研究では、民俗・地名資料を収集するために、現地調査も重視しておこなった。2004年8月5日(木)~7日(土)には、越前国丹生郡(福井県越前町)に位置する越知山大谷寺と越知神社、また、その周辺に分布する旧寺領の山間地域(福井県越前町・清水町・越廼村)を巡検し、必要に応じて聞き取り調査をおこなった。また、朝日町郷土資料館・織田町歴史資料館・劔神社宝物館・清水町立郷土資料館(すべて当時、2005年2月1日に朝日町・織田町は越前町と合併)などで、現地調査に必要となる情報を得るとともに、関連する資料を収集した。このような現地における民俗事例や地名の聞き取り調査によって、生業のあり方についての空間的に復元する作業を試みた。