表題番号:2004B-959 日付:2007/11/29
研究課題生命の発生をめぐる生命倫理と法規制
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学院法務研究科 教授 甲斐 克則
研究成果概要
(1) 生命の発生をめぐる生命倫理と法規制のあり方について、主としてイギリスにおける治療的ヒトクローン技術の応用と法的・倫理的規制の枠組を中心に研究をした。その成果は、2004年6月6日に金沢大学において開催された第67回比較法学会シンポジウム「生命倫理と法」で報告し、「生命倫理と法--イギリス」と題して、比較法学会誌の比較法研究66号に掲載した。また、より詳細な研究成果を「イギリスにおけるヒト胚研究の規制の動向」と題して比較法学38巻2号に発表している。なお、関連論稿として、デレク・モーガン「バイオエコノミーを規制すること--バイオテクノロジーと法との関係の予備的評価」を法律時報77巻4号に永水裕子氏と共訳で掲載した(いずれも後掲参照)。
(2) 最先端の生命科学技術、特に生命の発生の周辺の問題は、進歩が早く、倫理的・法的ルール作りが追いつかない現状にある。固い規制で縛りをかけ過ぎると、人類に取り有益と見込まれる研究の阻害となり、緩すぎると、人権侵害ないし「人間の尊厳」に抵触する倫理的・法的諸問題を引き起こす。本研究では、イギリスの判例や報告書等の分析動向を主たる素材として、両者の調和を図るには、ハードローとソフトローの組合わせが必要であることを論証した。
(3) イギリスでは、生殖補助医療については、Human Fertilisation and Emryology Act 1990を受けてHuman Fertilisation and Emryology Authority という認可機関が管理し、認可違反について刑事規制を行うシステムを作り出した。それでもなおその枠に収まりきれない問題、例えばES細胞を用いた研究や治療的クローンの問題については、『幹細胞研究の実証的研究に関する英国上院委員会報告書』が2002年に出され、その勧告に即して柔軟な対応が行われている。日本でも、この手法は大いに参考になる。